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緑内障の治療方法

一人一人に合った治療方法。要因を考慮して、一人一人に見合った治療方法を決めます。

高眼圧症

眼圧が22mm以上あるが視神経乳頭、視野などに異常がない場合高眼圧症と呼びます。高眼圧症の人は10年間で約10%の人が開放隅角緑内障を発症すると言われます。高眼圧症が緑内障へ移行するする割合は個人の危険因子により異なります。

高眼圧症の方は年1回程度の定期的な検診が必要です。

これらの危険因子が多数当てはまる人は緑内障に移行する可能性が高いと考えられています。 また、ポスナーシュロスマン症候群(突然虹彩毛様体炎と高眼圧を来す疾患)はステロイド点眼と眼圧下降剤で収まりますが繰り返すことが多いです。こちらも一部は緑内障に移行すると言われています。

総論

緑内障の治療目的は視機能の維持です。
現在エビデンスに基づいた唯一の治療方法は眼圧を下降することです。
また眼圧上昇の原因があれば原因の治療をします。治療は薬物、レーザー、手術から症例や病型に合わせて適切な治療法を選択します。
治療ではまず無治療時の眼圧をベースラインとして決め、視神経障害の進行を阻止しうると考えられる眼圧レベルを設定する。(目標眼圧)目標眼圧の例としては緑内障病期に応じて初期例19mmHg以下、中期例16mmHg以下、後期例14mmHgに設定することが提唱されている。また臨床研究から無治療時眼圧から20~30%眼圧下降を目標として設定することが推奨されています。

緑内障では現在一旦障害された視機能が回復することはありません。早期発見、早期治療が大切です。

眼圧下降の治療方針「原発開放隅角緑内障(広義)」

眼圧下降治療:薬物治療の導入「原発開放隅角緑内障広義)」

点眼薬、内服薬、注射薬

現在主に薬物治療が行われています。使用する点眼薬は緑内障の種類や併せ持つ疾患により異なります。以下に主な点眼薬を挙げます。

α1遮断薬
副経路からの房水流出を促進し眼圧を下げます。
β遮断薬
眼内の房水産生に必要な酵素活性を阻害し房水産生を減らし眼圧を下げます。
日本では1981年から処方されるようになり治療が画期的に進歩しました。
この点眼薬は高血圧に用いられていた内服薬を点眼薬に改良したものです。
第一、第2選択薬として繁用されますが気管支喘息や心臓病(Ⅱ度以上の房室ブロック、うっ血性心不全など)の人は病状を悪化させることがあるため禁忌です。
プロスタグランジン関連薬
毛様体の筋肉を収縮させ房水排出を促進すると言われます。
眼圧を下げる効果はβ遮断薬と同等またはそれ以上に高く第一選択薬になっています。
眼瞼部多毛、虹彩及び眼瞼色素沈着、上眼瞼溝深化等の副作用があります。妊婦・産婦、授乳婦は注意して使用します。
・炭酸脱水素酵素阻害薬:房水産生を減らし眼圧を下げると言われます。
日本では1999年に発売開始になった薬剤で内服薬もあります。
他の緑内障治療薬で効果不十分な場合追加薬剤として使用されます。
交感神経作動薬
眼内の房水産生に必要な酵素活性を阻害し房水産生を減らし眼圧を下げ、房水流出を促進します。
非選択性交感神経刺激薬は散瞳するため閉塞隅角緑内障には禁忌です。また、α2受容体刺激薬はアレルギー性結膜炎を起こします。
副交感神経作動薬
毛様体の筋肉を収縮させ瞳孔を小さくすることにより隅角部のスペースを広げ房水が排出しやすくなると言われます。
長期使用すると様々な副作用があるため現在では閉塞隅角緑内障で一時的に使用される以外は使われません。

また内服薬と注射薬には炭酸脱水素酵素と高浸透圧薬があります。
いずれも眼圧を下げる作用は強力ですが効果の持続時間は短く全身への影響も大きいため長期間使用することはできません。
現在では急性緑内障や続発緑内障などで眼圧上昇が著しい場合に手術治療を行うまでの間をしのぐ緊急治療薬として使用されます。
炭酸脱水素酵素は四肢のしびれ、味覚異常、電解質異常、胃腸障害、腎・尿路結石などの副作用があります。
その他視神経への血液循環を良くするために循環改善剤や視神経を保護するためにビタミン剤の内服を行う場合がありますが効果のほどは定かではありません。

レーザー治療、手術

緑内障の治療はまず点眼薬による治療を行い眼圧を下降させることが主になります。点眼薬を複数使っても眼圧下降が不十分な場合内服薬を用いて眼圧を下げるようにします。
しかし、内服薬を長期間使用すると手足のしびれ、腎臓障害、糖尿病、尿路結石など副作用が出ます。投薬減量、中止のため眼圧を下げる手術を行います。

レーザー治療
アルゴンレーザーやヤグレーザーなどを使って房水排出の障害となっているところを広げて房水の出口を開放する手術を行います。
また房水を作っている毛様体をレーザーで凝固破壊することにより房水が作られないようにする方法もあります。レーザーの侵襲は観血手術に比べて小さいので観血手術に踏み切る前に行われます。
レーザー虹彩切開術
瞳孔ブロックを解除し隅角を開大させる手術です。原発及び続発閉塞緑内障で行われますが数年後に水泡角膜症を起こすことがあるため白内障手術が第一選択となりました。
選択的線維柱帯形成術(SLT)
線維柱帯の色素細胞を選択的に傷害し機能的再構築を促し房水排出抵抗を減らし眼圧を下降させます。
約70~80%に有効。1年で70%、3年で50%効果が持続し繰り返し行えます。
眼圧下降率は20-25%3~5mmHgで点眼薬1本分に相当します。効果判断は1~2カ月後です。
観血手術
薬物治療やレーザー治療で十分に眼圧が下がらない場合観血手術を行います。
房水の排出路を開いたり全く新たに房水の排出路を作ったりします。
房水の出口に抗がん剤マイトマイシンCを塗布することで排出路が塞がりにくくすることができるようになり手術の効果は長期間持続できるようになりました。
それでも10年間で約20%の人で眼圧が再び上昇します。また、抗がん剤を塗布した部分が弱くなって破れたり感染して重篤な合併症を起こすことがあります。
一番重要なことは良好な視機能の保持です。手術を受けるかどうかは「年齢」「病気の程度」「進行速度」を十分に評価して
「寿命に達するまで必要最低限度の視機能が保たれるかどうか。」を予測して決めます。
ほとんどの緑内障は慢性で進行は緩徐ですので時間を掛けて落ち着いて決めましょう。
水晶体再建術併用眼内ドレーン挿入術
当院では、低侵襲緑内障手術(MIGS)の1つである、iStent®(アイステント)を厚生労働省の認可を得て導入しておりました。。
この度、第2世代のiStent®である「iStent inject®W」が我が国でも承認され、当院でも導入いたしました。これまでのiStent®では挿入できるステントが1個でしたが、iStent inject®Wでは、1つのインサーターで2個のステントを挿入できるようになり、これまでの1個留置よりも眼圧下降及び点眼薬減少効果が期待できるようになりました。
第2世代のiStent® 手術による体(眼)への負担が少ない手術器具
iStent inject®W は日本で承認を受けたMIGSの世界最小(全長0.36mm)インプラントです。軽度から中等度の開放隅角緑内障の人が白内障手術を受ける際に、チタン製のステント(筒)をシュレム管に挿入します。線維柱帯網をバイパスしシュレム管に房水を流すことで房水の排出を増加させ、眼内の自然な房水排出を促進します。術後に眼圧が少し下がることが多く、点眼薬が減ったり不要になるケースがあると報告されています。
世界で一番小さい第2世代のiStent® 使用した手術イメージ
iStent inject®W の一番の利点は、結膜などに全く侵襲がなく、将来にマイナスとなる後遺症がほとんどないことです。 白内障手術と同時に行うことができ、手術に要する時間が短く、非常にシンプルな手術操作が高く評価されています。厚生労働省の認可を受けて実施している施設は日本ではまだ少ないですが、今後更なる普及が期待される治療法です。

緑内障治療を行っている患者様で、白内障手術をお考えの方はご相談下さい。
費用は健康保険適応で1、2割負担 :片眼18,000円、3割負担:片眼約97,000円になります。
繊維柱帯切除術
強膜弁を作成し強膜弁下に輪部組織の切除を行い強膜弁を縫合して濾過量を調整する術式。現在最も一般的な緑内障手術。
チューブシャント術
専用のインプラントを用いて前房と眼外の間に新たな房水流出路を作成する術式。

生活習慣の見直し

生活習慣病は20世紀の医学用語の代表です。
先天性緑内障以外は日常生活を改善することにより緑内障の発症及び進行を防ぐことが可能です。
肥満、高血圧、運動不足、精神的ストレスなどを避けて十分な休養を取ることが他の病気同様緑内障を予防することになります。
緑内障に関する研究において眼圧が上昇すると証明されている因子は加齢、女性、黒人、遺伝、寒冷、高血圧、肥満、頭位を低くする、激しい運動、交感神経系亢進、副腎皮質ステロイド、糖尿病、薬物、近視など多数あります。
カフェインも眼圧を下げると言われているのでコーヒー、紅茶、緑茶の飲み過ぎは好ましくありません。